京大に進んだ兄弟の話
兄との出会いは彼が中学3年生のときです。
そのお父さんは「うちの息子は全然勉強しないんです」と面談で嘆いていました。「学校の先生から見放されている」とも。
しかし、初対面の印象は「この子は頭がいい」でした。
その兄弟の外見はよく似ていました。品行方正なところも。
しかし、それ以外は全く正反対です。
兄 |
弟 |
勉強を全くしない |
勉強熱心 |
宿題をしない |
自分から「宿題を出してほしい」と言う |
文系で文学部志望 |
理系で工学部志望 |
数学が極端に苦手で、模試の偏差値がなんと17のときもありました |
弟は数学が得意でした |
天才型 |
秀才型 |
英語のボキャブラリーが乏しい(勉強しないのだから当然) |
弟はボキャブラリーが豊富(真面目に勉強しているのだから当然) |
この2人がどのようにして京大に合格したのか?
弟が受かるのは納得できるでしょう。
問題は兄です。語彙不足を論理的思考力で補いました。
2人とも追い込み時期は京大の過去の入試問題を使いましたが、兄は英単語をあまり知らないので、京大の英文を読めません。文法の知識もあいまいです。
英語の語彙と文法の知識が不足している人が京大英語で合格点を取るために何が必要か。以前書いたように、それは「論理的思考力」です。では、それは具体的にはどういうものでしょうか。京大の入試問題を使って説明します。
その文章は “Society is supposedly founded upon a shared understanding.” という文から始まっています。多くの受験生はsupposedlyを見たことがないでしょう。ここでは無視します。foundedは多くの人が知っているでしょう。しかしfind-found-found(見つける)と混同する人も中にはいるでしょう。found-founded-founded(~を設立する)です。 “a shared understanding”は「ある共有された理解」と解釈すると、ほとんどの受験生はこの文をsupposedlyは無視して「社会は、ある共有された理解の上に設立されている」と解釈するでしょう。でも、何が言いたいのかはっきりしません。大事なことはここで「分からない」からといってパニックにならないことです。
次に “The only way it can maintain this commonly agreed upon outlook from generation to generation is by passing on from parents to children the most basic thoughts and ideas that hold people together.”という文が来ます。itがsocietyを指していることは明らかでしょう。重要なのは thisです。thisは直前の物や事しか指しません。すると“this commonly agreed upon outlook”とは先程の“a shared understanding”を指していると分かるでしょう。だから“this commonly agreed upon outlook”については無視します。この文の主部を大雑把に解釈すると、「社会がこの共有された理解を世代から世代へ維持できる唯一の方法は」となります。 “by passing on from parents to children the most basic thoughts and ideas that hold people together.”はどうでしょうか。構造が複雑になっていますね。この文の主語は「方法」なので、by passing on~「~を伝えることによって」が補語になっています。何を伝えるか、目的語が後ろに回っていることに気づくでしょうか。 “the most basic thoughts and ideas”です。なぜ後ろに回っているかというと、もし “from parents to children”という修飾語が最後に来ると、 “hold”を修飾しているようにも見えるからです。全体をおおまかに解釈すると、「社会がこの共有された理解を世代から世代へ維持できる唯一の方法は人々をまとめる最も基本的な思想と理念を親から子へ伝えることである」となります。
次の文は “By so doing, it is able not only to keep itself alive but to thrive over time.”です。
そうすることで社会は自らを生かしておけるだけでなく長期にわたって繁栄できる。
This is more than mere intellectual assent or agreement to some vague principle or compromise. これは、何らかの曖昧な主義や妥協案に対して単に知性を用いて同意する以上のことである。
It is something deeply held and shared so that it involves not just a description of how the world is, but how it should be. それは人々の心に深く抱かれ共有されているため、世の中がどうなのか抱けてなくどうあるべきかも表している。
The understanding depends upon its founding values, with the early experiences of infancy being the most critical for the formation of a social sense in a child, which is why parental concern for morality or the actual values adopted is vital. そのような理解は、その基盤となる価値観に依存し、幼児期の初期の体験が子供の社会意識の形成に最も重要である。それゆえ道徳観念または採用する実際の価値観に親が関心を持つことが不可欠である。
This means that the lessons taught during the first weeks or months are the most important, as every subsequent value must be based upon those already adopted by the maturing mind. このことは、生後最初の数週間または数カ月間に教えた教訓が最も重要であることを意味している。というのは、その後に身につくあらゆる価値観は、成熟しつつある精神によって既に採り入れられている価値観に基づかなければならないからである。
Once the foundation of values is set, it is for life, and the values taught become a permanent part of the adult’s understanding. いったん価値観の基礎ができると、生涯のものとなり、その教わった価値観は永久に大人の理解力の一部となる。