京都大学和文英訳2016-2020
京都大学2019年度
「マイノリティ」という言葉を聞くと、全体のなかの少数者をまず思い浮かべるかもしれない。しかし、マイノリティという概念を数だけの問題に還元するのは間違いのもとである。人種あるいは宗教のような属性によって定義づけられる集団は、歴史的、文化的な条件によって社会的弱者になっている場合、マイノリティと呼ばれる。こうした意味で、数としては少なくない集団でもマイノリティとなる。例えば、組織の管理職のほとんどが男性である社会では、女性はマイノリティと考えられる。 |
2019年の英作文問題をなるべく「システム英単語」を使って解いてみましょう。
「マイノリティ」という言葉を聞くと、全体のなかの少数者をまず思い浮かべるかもしれない。
「Aを聞くとBを思い浮かべる」は「AをBと関連づける」と考えて、associate A with Bを使いましょう。Red is associated with danger.「赤は危険と結びつけられる」を参考にして、
The word “minority” may be associated with ~
次に、「全体のなかの少数者」は「全体の中の小さなグループ」と考えて、簡単にa small group in the wholeでよいでしょう。以上から解答は、
The word “minority” may be associated with a small group in the whole.
しかし、マイノリティという概念を数だけの問題に還元するのは間違いのもとである。
「しかし」は等位接続詞のButではなく接続副詞Howeverの方が無難です。もし英語のネイティブが採点するならば、文頭のButを減点するかもしれません。
「~するのは間違いのもとである」は「~することは間違いである」と考えて、It is wrong to ~にしましょう。
難しいのは「AをBに還元する」をどうするかでしょう。日本語の力を試されていると思います。文脈から、「より小さい状態への変化に用いる」表現であるreduce A to Bを使うのがベストです。
「概念」はconceptにします。the concept of time「時間の概念」を参考にして、the concept of minorityにします。
「数の問題」は、a matter of numberにすると、結局、この部分は
However, it is wrong to reduce the concept of minority to a matter of number.
人種あるいは宗教のような属性によって定義づけられる集団は、歴史的、文化的な条件によって社会的弱者になっている場合、マイノリティと呼ばれる。
「人種」はrace、「宗教」はreligion、「属性」はattribute「特性」、「定義づける」はdefine、「歴史的、文化的条件」はhistorical or cultural conditionsにします。
「社会的弱者になっている場合」は、「彼らが社会的に弱いとき」と言い換えて、when they are socially weakにします。ただし、この場合、主節の主語と従属節の主語が一致しているのでthey areを省略することができます。したがって、この部分の解答は
The groups defined by such attribute as race and religion are called minority when socially weak in historical or cultural conditions.
こうした意味で、数としては少なくない集団でもマイノリティとなる。
「こうした意味で」は「ある意味で」in a senseを参考にして、in this senseにします。「数としては少なくない集団」は「かなり多くのメンバーがいる集団」と言い換えて、a group with quite a few membersにします。したがって、この部分の解答は、
In this sense, a group with quite a few members can be a minority.
例えば、組織の管理職のほとんどが男性である社会では、女性はマイノリティと考えられる。
「組織の管理職のほとんどが男性である社会」についてはいろいろ考えられますが、文字通り訳すのではなく、簡単に「男性が支配している組織」と言い換えて、dominate the world economy「世界経済を支配する」を参考にして、an organization dominated by menまたはa male-dominated organizationにします。
「女性はマイノリティと考えられる」は、前文でcan be a minorityと言っているので、あえてminorityを繰り返さずに、as such「そういうものとして」を使うと、この部分の解答は、
For example, women can be as such in a male-dominated organization.
以上をまとめると、
The word “minority” may be associated with a small group in the whole. However, it is wrong to reduce the concept of minority to a matter of number. The groups defined by such attribute as race and religion are called minority when socially weak in historical or cultural conditions. In this sense, a group with quite a few members can be a minority. For example, women can be as such in a male-dominated organization.